【スレート屋根】長持ちさせるメンテナンス方法と注意点

屋根塗装

日頃なかなかしっかりと見る機会のないご自宅の屋根ですが、太陽の紫外線や雨風を直接受け、日々劣化が進んでいます。

「どうせ見えないから」とほうっておけば、雨漏りや建物内部の腐食など、家全体の劣化を急速に早めてしまう恐れがあります。

今回は、屋根材種類別で見るメンテナンスの注意点【化粧スレート編】として、大切なお住まいを守るスレート屋根のメンテナンス方法や注意点について解説します。

新築戸建て住宅の採用率が最も高いスレート屋根

屋根材の種類は、大きく分けてスレート、粘土瓦、セメント瓦、金属系、シングル材に分けられます。

その中でもスレート屋根は新築戸建てでの採用比率が高く、およそ30%を占める人気の屋根材です。
※出典:住宅支援機構 フラット35住宅仕様実態調査報告(平成29年度)

スレートとは

スレートにはいくつか種類がありますが、ここでは一般的に多く使われている化粧スレートについて解説します。

化粧スレートはセメントと繊維材料を混ぜて製造される屋根材で、かつては天然繊維の石綿(アスベスト)を繊維材料として使用していましたが、現在では法律の改正と人体や環境への配慮から人工繊維が使われており、アスベストは使用されていません。

コロニアルやカラーベストなどの商品名で呼ばれることもありますが、いずれも同じ屋根材のことを指しています。

人気の理由としては導入コストが安い、デザインが豊富、軽量で耐震性が高い、普及率が高いため多くの業者が施工できる。などが挙げられます。

化粧スレートはメンテナンスが必要

人気が高い一方で、化粧スレートは粘土瓦のようなメンテナンスフリーに近い製品と違い、定期的なメンテナンスが必要な屋根材です。

なぜなら、化粧スレート自体には防水性がありません
そのため、工場生産時に塗装をすることで塗膜による防水性を付加しています。

当然ですが、紫外線や風雨にさらされることにより塗膜は劣化していきます。そして徐々に防水性が失われていきます。

ですので、再塗装(塗り替え)をして再度防水性を高める必要があるのです。

もし塗装によるメンテナンスを行わなければ、スレート瓦が水分を含むようになり藻や苔が発生しやすくなります。



それだけでなく、水分を吸って膨張、乾燥して収縮を繰り返すことで浮きや反りが発生し、割れや欠けが起きやすくなります。

最悪の場合は雨漏りにつながりますので、スレート瓦の塗り替えは定期的に行うことをおすすめします。

新築から10年前後が最初の塗り替えの目安になりますが、立地や環境によってはもっと早い時期に劣化の症状が出ることもありますので、定期的な点検を行いメンテナンス時期を把握しておきましょう。

メンテナンス時の注意点

化粧スレートに塗装する際には塗膜の縁切りを必ず行う必要があります。

縁切りやタスペーサーを使用しないと雨漏りが発生してしまう可能性があるからです。

縁切りやタスペーサーについてはこちらの記事で詳しく説明しています。

屋根という厳しい環境に耐えうる塗料選びが重要

また、太陽の熱を直接受ける屋根は日射量が多く、降雨や積雪などの影響も受けるなど外壁に比べ厳しい環境条件に晒されています。

そのため屋根塗装に遮熱性や断熱性などの機能性塗料を選ぶ方も多くいらっしゃいますが、それらの機能は厳しい環境条件に耐えうる塗膜が活きていてこその機能です。

ですので、耐候性、耐久性を重視した塗料や色選びが重要となります。

屋根塗装の塗料を選ぶポイントについてはこちらの記事で詳しく説明しています。

また、遮熱塗料の性能を長期的に維持する4工程塗装についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

塗装をおすすめしないスレートもある

化粧スレートの塗装によるメンテナンスの必要性について説明しましたが、中には塗装をおすすめしない製品もあります。

具体的には

  • パミール(ニチハ株式会社)
  • アーバニーグラッサ(株式会社クボタ/現・ケイミュー株式会社)
  • セキスイかわらU(セキスイルーフテック/現・積水屋根システム株式会社)

などです。

パミールはノンアスベスト屋根材の先駆けとして、その他の製品はアスベストの使用規制に合わせてアスベストの含有量を減らしていき、最終的にはノンアスベストでの製造に至った製品ですが、結果的にメーカー側が想定する強度を得ることができず、屋根材の割れや表面層が剥がれなど、さまざまな不具合が発生しています。

これらを「塗装ができない屋根材」として注意喚起する記事やサイトをよく見かけますが、割れや剥がれなどがなく、軽度の劣化であれば塗装メンテナンスすることはできます。

ですが、前述のタスペーサーを入れにくい形状であったり、強度が低いため工事中に割ってしまったりするケースもありますので、塗装による施工を行う際には事前に強度や縁切りの方法を確認したり、十分な屋根足場を組んだりと注意が必要です。

画像左:縁切りせずに塗装したアーバニーグラッサに発生した膨れ 画像右:劣化が進行したパミール

すでに屋根材に重度の劣化が認められる場合には塗装以外の選択をおすすめします。

この場合、塗装を行ったとしても屋根材の割れや剥がれが進行する可能性があるため、もし塗装を希望する場合には、そのような事例があることを理解したうえで依頼することになります。

スレート屋根の塗り替え以外のメンテナンス方法は?

先に述べたような塗装をおすすめしない屋根材や、劣化が進み塗り替えができない場合には葺き替えやカバー工法(重ね葺き)という選択肢があります。

葺き替えとは

葺き替えとは、既存の屋根材を撤去して新しい屋根材に替える作業のことです。

既存屋根の撤去や処分に費用が発生し、撤去後に下地板(野地板)から修繕していくので工期も時間がかかりますが、細かい部分まで修繕できることや、これまでより軽い屋根材を選ぶことで耐震性を向上させることができます。

カバー工法とは

カバー工法とは、既存屋根の上に軽量な屋根を被せる工事方法です。

葺き替えと比べると、屋根の撤去や処分の費用がかからないため予算を抑えられ、工期も短く済ませることができますが、既存屋根の上に被せるため屋根が重くなり、葺き替えと比較すると耐震性は低くなります。

カバー工法は、下地板(野地板)が腐食などで劣化が進んでいる場合には行えませんので、その場合には葺き替えを選択することになります。

おわりに

スレート屋根のメンテナンス方法や注意点について解説しました。

屋根はお住まいにおいて非常に重要な箇所でありながら、ご自身で点検やメンテナンスを行うことが難しい部分です。

また、先に挙げたようなノンアスベスト移行時期の屋根材が使われてる場合、葺き替えやカバー工法などの選択肢も考える必要も出てきます。

化粧スレートのメンテナンスをお考えでしたら、現状を見極め最適な提案ができる施工業者にお願いすることをおすすめします。