「きちんと塗ってもらえるのか」 外壁塗装に漠然とした不安を感じるあなたへ

業者選び

その不安は、正しい

外壁の色褪せが気になりはじめた。ひび割れが出てきた。そろそろ塗り替えを考えなければ…
そう思いながらも、なかなか踏み出せない方は少なくありません。
その迷いの正体は何でしょうか。

「費用が高そう」「業者選びが難しそう」こうした声をお持ちの方は多くいらっしゃいます。
しかし最近、もっと根本的な不安をお持ちの方が増えています。

「きちんと塗ってもらえるのか、わからない」 この不安は、決して取り越し苦労ではありません。

ある訴訟が示した、業界の現実

少し前のことになりますが、外壁・屋根の塗装工事をめぐって、施主が塗装業者を相手取り法廷で争った事例があります。

工事は完了し保証書も発行されていましたが、業者の施工内容に不信を抱いた施主は工事代金の支払いを留保。 これに対し業者は、工事は適正に完了しているとして、工事代金の支払いを求めて提訴。
両者の溝は埋まることなく、争いは法廷へと持ち込まれました。

裁判の過程で明らかになったのは次の事実でした。
上塗り塗料の使用量が著しく不足しており、適切な膜厚が確保されていなかった可能性が高い。さらに下塗り塗料についても、製造ロットから判断して使用期限を大幅に過ぎた、他の現場で余った塗料の使い回しであることが判明しました。

塗料が足りなくなっても追加発注せずに間に合わせる。余った塗料を使い回す。業者にとっては「いつものやり方」だったのかもしれません。
自社都合の「合理化」が、習慣として積み重なっていたのです。

最終的に裁判所は施主の主張を全面的に認め、工事契約は解除。業者は一切の対価を得ることなく、全面敗訴という結末を迎えました。

この訴訟ではメーカーである弊社も、製品保証の有効性をめぐって裁判所から調査嘱託を受け、陳述書の提出や書面尋問への対応を幾度となく余儀なくされました。
一件の施工不良が、関係するすべての当事者を長期にわたって消耗させたのです。

保証書は「安心の証明」になるのか

この事例で施主が手にしていた「保証書」は、結果として機能しませんでした。
塗料メーカーが発行する製品保証は、メーカーの仕様通りに施工されていることを前提としています。

「使用期限切れの塗料が使われていた」「他社製品が混用されていた」「塗布量が著しく不足していた」
いずれも、メーカー保証の対象外となります。

製品保証書はあくまで「適切な施工が行われた場合に有効な書類」であり、施工そのものの品質を保証するものではありません。

では、消費者は何を基準に判断すべきなのでしょうか。

不安を「安心」に変える、3つの確認ポイント

業者選びに「絶対の正解」はありません。しかし、確認できることは確かにあります。

① 使用する塗料と数量を、事前に書面で確認する

見積書に「塗料代」とだけ書かれている場合は注意が必要です。使用するメーカー名・製品名・使用数量が明記されているか確認しましょう。塗装面積に対して必要な塗料の量は、メーカーのホームページで公開されている仕様書から概算できます。数量の記載が極端に少ない場合や表記が曖昧な場合は、所要量不足のおそれがあります。

② 施工中の記録(写真)を求める

下塗り・中塗り・上塗りの各工程で、施工写真を残してもらうよう依頼しましょう。写真があれば、工程が省略されていないか、適切な材料が使われているかを事後的に確認する手がかりになります。

③ 十分な情報を得る

塗料や施工方法、工程について詳細な説明を求め、疑問や不安に感じたことは率直に聞いて確かめましょう。インターネット上には不確実な情報も多く、判断に迷う場面もあるかと思います。そのような場合は、塗料メーカーに直接問い合わせることをおすすめします。

後悔しないためにも知ってほしい大切なこと

正しく塗料を扱い、仕様書通りの施工を当たり前にこなす—誠実に仕事をする塗装業者はもちろんたくさんいます。
メーカーとしても、そのような業者がこの業界の多数派であってほしいと強く願っています。

しかし現実には、消費者からメーカーへの問い合わせは年々増えています。
「業者に聞いても要領を得ない」「嫌がられそうで言い出せない」「仕様や使用した缶数を確認したい」
こうした声が多くの方から寄せられているのです。

そして、その不安が現実のものとなった場合には、消費者自身が弁護士に相談するケースも珍しくなくなっています。

外壁塗装は、10年〜15年に一度の大きな買い物です。
疑いを持ちながら発注するのではなく、納得して任せられる業者を選んでいただきたい。そのための「確認する習慣」が、消費者自身を守る最初の一歩になります。
そして、その確認に対する業者の対応や反応もまた、企業姿勢や施工品質を見極める判断材料のひとつになるでしょう。

メーカーとして、お伝えしたいこと

弊社は塗料を製造・販売するメーカーです。塗装業者と直接契約を結び、製品を届けています。消費者の方と直接お会いする機会はほとんどありません。

それでもこの記事を書いたのは、塗料本来の性能は、適切に施工されてこそ発揮されるからです。
どれだけ優れた塗料でも、仕様から逸脱した使い方をされれば、その性能は保証できません。

「良い塗料が使われている」と「良い工事がされている」は、イコールではありません。
この違いを、一人でも多くの方に知っていただきたいと思っています。

外壁塗装を検討されている皆さまが、信頼できる業者と出会い、その確かな施工によって、大切な住まいでこれからも長く安心して暮らしていけることを心から願っています。

本記事で取り上げた訴訟事例は、関係者のプライバシーに配慮し、企業名・個人名等を伏せて紹介しています。