誰も教えてくれなかった外壁塗装の「塗料」のはなし【第二章】無機塗料を徹底解説!

外壁塗装の「無機塗料」徹底解説
塗料について

3回に分けてお届けしている外壁塗装の「塗料」のはなし【第二章】になります。
住宅の外壁塗装のリフォームにおいて、「どの塗料を選ぶか」はとても重要な要素です。

前回【第一章】では「アクリル樹脂塗料」「ウレタン樹脂塗料」「シリコン樹脂塗料」「フッ素樹脂塗料」を塗料メーカーの視点で順に紹介しました。

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【第二章】である今回は、建築用塗料の最高グレード「無機塗料」について、徹底解説します。

最高グレード「無機塗料」を徹底解説

外壁塗装の塗料の中で最高グレードと言われ、長いもので30年の耐用年数も存在する無機塗料。
【第一章】で「樹脂」が塗料のグレードを左右する重要な成分と述べましたが、無機塗料の場合、その定義は少し異なります。

無機塗料とはどのような塗料なのか、今から詳しくご紹介していきます。

無機塗料の「無機」とは?「有機」との違いについて

無機塗料の説明に入る前に「有機物」と「無機物」の違いについて説明いたします。

有機物:プラスチック、木材、紙など
 〈特徴〉
 ・炭素を含む
 ・紫外線で劣化する

無機物:ガラス、石などの鉱物、陶器、金属など
 〈特徴〉
 ・炭素を含まない
 ・紫外線で劣化しない(半永久的な耐久性)

無機塗料とは

【第1章】で紹介した「アクリル樹脂塗料」「ウレタン樹脂塗料」「シリコン樹脂塗料」「フッ素樹脂塗料」は、すべて「有機物」である合成樹脂を主原料とした塗料です。
では、無機塗料とは「無機物を主成分とした有機物(樹脂成分)を含まない塗料」なのかと言われると、そうではありません。

たしかに無機物100%の塗料が作れれば、半永久的に劣化しない塗料が作れるかもしれませんが、無機物だけでは硬すぎて塗料にすることができません。

無機塗料とは「有機樹脂の中に無機物の成分を配合した塗料」を指します。
無機物の耐久性や耐候性を活かした有機と無機の良いとこ取りの塗料であり、「無機有機ハイブリッド塗料」と表現するメーカーもあります。

他にもある「無機塗料」

話は少しそれますが、「無機塗料」と言われるものは他にもさまざまあります。

  • アクリルエマルション(アクリル樹脂塗料)に、骨材といわれる細かく砕いた石や砂を混ぜた「リシン仕上げ」に使われる塗料
  • 骨材や色砂などを混ぜて石材調に仕上げる吹付塗材

など

すべてに共通して言えることは「外装に使用する湿式仕上材の中に無機素材を使用しているもの」ですが、上記2つの塗料が無機素材を使用する理由は意匠性目的の意味合いが強いです。

無機塗料の特徴

無機塗料の無機成分は、珪石(石英)から生成された素材を使用しています。
珪石は強靭な結合エネルギーをもつSiO2(シロキサン結合)のカタマリであり、紫外線によって劣化することはありません。

これを還元、反応、変性させて樹脂に合成させることで、高い耐候性や低汚染性、難燃性などの無機物の特性が塗料に加えられます。

そのシロキサン結合に有機基(R)がつながった無機素材のことを広く「シリコーン」と呼び、ゴム、レジン、オイルなど様々な工業製品に応用されています。

シリコン樹脂塗料は「無機塗料」?

「シロキサン結合」や「シリコーン」などのワードで、【第一章】で紹介しました「シリコン樹脂塗料」を思い浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

シリコン樹脂は正式には「シリコーン樹脂」のことですので、たしかに無機素材を含んでいます。
では、なぜシリコン樹脂塗料を「無機塗料」と呼ばないのか。

そこには、それぞれの塗料に無機素材を配合する「目的の違い」があります。

シリコン樹脂塗料は、「コストパフォーマンス」向上のため

シリコン塗料が誕生するまでは、アクリル樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料が住宅塗装の主流でした。
シリコン樹脂塗料は、それら塗料の塗装作業性を損うことなく「コストパフォーマンス」を向上させることを目的に開発されています。

無機素材(シリコーン)は、性状、種類、目的別に非常に多くの銘柄があります。
シリコン樹脂塗料は、コストを意識しながら配合率や銘柄で無機素材を選び、大きく価格に反映しない範囲で、無機素材ならではの機能(耐候性や親水性)を導入した塗料になります。

無機塗料は、すべてにおいてフッ素樹脂塗料を「超える」ため

無機塗料は、無機素材を高い割合で合成させており、シリコン樹脂塗料とは無機素材の質も量も異なります。
塗料に使われる樹脂のなかで最も結合エネルギーが高いのはフッ素(C-F)であり、そのエネルギーはシロキサン結合の結合エネルギーを上回るほどです。
ですが、【第一章】で述べましたようにフッ素樹脂は高価であり、製造コストがかかり過ぎるという問題があります。

ですので、同じ耐久性の塗料を設計した場合、高価なフッ素樹脂を採用するよりも無機素材の質と量に特化した塗料づくりを行えば、経済的にも耐久性的にもフッ素樹脂塗料を超えるすぐれた塗料の開発が可能になります。

おわりに

無機塗料専門メーカーとしてスタートした弊社が考える次の「塗料」

各塗料メーカーが塗料グレードごとの製品ラインナップを揃えていく中で、弊社は無機塗料に特化した塗料開発と原料供給ルートの構築をしてきました。
いまだシリコン樹脂塗料が主流の外壁塗装分野において、最も多くの無機塗料ラインナップを揃えています。

無機塗料は高い配合率で無機素材を含んでいるため、成膜してしまえば耐用年数が長い保護膜を得られますが、誕生当初は塗装作業性や塗膜の柔軟性、価格など一部犠牲にする部分もありました。

そのようなデメリットをひとつずつ改善・改良しながら、弊社の無機塗料は進化し続けています。

【最終章】となる次回は、無機塗料の開発を進めて行く中で見えた「新たな塗料」についてご紹介いたします。