
3回に分けてお届けしている外壁塗装の「塗料」のはなし
今回が【最終章】になります。
2回にわたり、外壁塗装で使用される塗料の種類や特徴について紹介してきました。
【第一章】では、アクリル塗料からフッ素塗料までをグレード順に、続く【第二章】では、目下最高グレードにいる「無機塗料」についての定義や解釈について解説しました。
まだ読んでいないという方は、本記事を読む前に、できればこちらにも目を通して頂けますと幸いです。


近年では、今まで幅広い汎用性を重視した製品づくりを行ってきた大手塗料メーカーでも、住宅塗装向けに無機塗料を数種類ラインナップし、その高い機能性と耐久性が徐々に注目されつつあります。
【最終章】である今回は、無機塗料専門メーカーとしてスタートした弊社が開発を進めて行く中で誕生させた、全く新しい概念の塗料「有機HRC塗料」の紹介、そして、外壁塗装の塗料の「実情」と「これから」について、少し踏み込んでご説明いたします。
目次
塗料グレードのおさらい
外壁塗装の塗料グレードは「アクリル < ウレタン < シリコン < フッ素 < 無機」という順番で一般的に認識されています。
皆さんの中にも住宅の塗り替えを検討し、ご自身で調べたり、見積りの提案を受けたりするなかで、そのように見聞きしたことがある方もいるのではないでしょうか。
確かに、おおむねその順番に間違いないです。
ですが、塗料の設計はそんなに単純なものではありません。
極端なことを言えば、この順番を真逆にする塗料ラインナップも作り方次第では可能です。
塗料グレードに隠されたメーカー側の「意図」と「実情」
メーカー各社は、価格競争・市場競争のなかで、販売便宜上、先述のような「塗料の序列」を市場に作り上げました。
そのため今日では、「シリコン塗料だとこのくらいの価格で売れない…だからこのくらいの耐候性で十分だろう」と、逆にこの序列に縛られ、そこから先の塗料開発を打破できずにいます。
メーカーが現在の塗料グレードにはない新たな塗料を開発し、今後も塗料グレードを掲げて市場を誘導するにはもう限界がきています。
近年よく耳にする「ラジカル制御形塗料」という新しい市場に、どのメーカーも飛びついたのも必然の流れだったのです。
※ラジカル制御形塗料
塗料の劣化要因である「ラジカル」の発生を抑制し、塗装を長持ちさせるための技術を取り入れた塗料。
ラジカル制御形塗料については以下の記事で詳しく解説しています。

では、もう今以上に長持ちする塗料は生まれないのでしょうか。
無機塗料を超えるような塗料は作れないのでしょうか。
建築用の塗料には耐候性だけではなく、施工現場での作業性、環境への配慮、製造原価など、塗料として成立させるための様々な「制約」があります。
塗料は、塗装業者の手によって現場で施工され、塗膜となり、完成品となる「半製品」です。
たとえば、無機の配合率を高めるなどして、試験上の耐候性を今よりも向上させた塗料をつくることは可能かもしれませんが、施工時に今以上にさまざまな注意事項や制約が課せられることになり、それでは塗料製品として「成立」することが厳しくなります。
そのような制約をクリアしながら、建築用塗料で比類のない耐候性を実現したのが、これから紹介する「有機HRC塗料」です。
有機HRCの定義:3つの製法設計技術
有機HRC塗料は、従来の樹脂グレードや価値観にとらわれずに設計されており、「シリコン塗料」や「フッ素塗料」のようにカテゴライズすることができません。
ですが、形成する塗膜は物理的にも強靱であり、スーパーUVテスターやスーパーキセノンランプ等の促進耐候性試験においても無機塗料をも超える光沢保持率を保持しています。
促進耐候性試験については以下の記事で詳しく解説しています。

有機HRC塗料の驚異的な耐候性を支える「3つの製法設計技術」をご紹介します。
【製法設計技術 1】高度な樹脂の複合技術 -High Resin Combine-
単一の樹脂設計にとらわれず、複数の有機樹脂の複合技術を採用した有機HRC塗料は、従来の樹脂グレードに当てはめることができません。
無機成分に頼らない特殊有機複合樹脂が、柔軟性と強度をあわせ持つ最高峰の塗膜性能を発揮します。
有機HRC塗料の塗膜は、弾性硬化剤などの添加に頼ることなく、パキパキと割れることもない、容易に切れることもない、頑強であり、かつしなやかな「靱性」塗膜を形成します。
無機塗料と比較した塗膜の靱性テストをご覧ください。


【製法設計技術 2】高次元ラジカル制御技術 -High Radical Control-
ラジカル制御形塗料の特徴は、大きく「ラジカル制御レベルの高い酸化チタンの配合」「 HALS(光安定剤)やUVA(紫外線吸収剤)の添加」の2つであることは、以前、ラジカル制御形塗料の記事で解説した通りです。
また、一概にラジカル制御といっても、使われる酸化チタンや添加剤は各メーカー各塗料、製造原価の制約の中で採択しており、結果、その性能はピンきりであることもお伝えしました。
ラジカル制御レベルを可能な限り高めた有機HRC塗料の“高次元”ラジカル制御の特長は次の2つになります。
処理レベルの高い酸化チタンを採用
自動車や航空機にも使われる処理レベルの高い(ラジカル制御効果がさらに高い)酸化チタンを採用することで、今までの建築塗料の常識を覆す耐候性を実現しています。

HALS、UVAの高配合と長寿命化
従来、HALSはミルベースの段階(樹脂や顔料、溶剤を混ぜる段階)で添加していますが、施工後に経年で溶出、放散されてしまうという懸念がありました。
有機HRC塗料はHALSを樹脂の合成段階で加えるため、放散してしまうことなく効果を持続させることができます。
各メーカーがラジカル制御技術を競い合う中、有機HRC塗料はこのような建築塗料の枠にとらわれない技術を採用することで、比類のないラジカル制御レベルを発揮しています。

【製法設計技術 3】高耐候厳制調色技術 -High Regulation Color-
塗り替えをする際は、色や艶を自由に選ぶことも楽しみのひとつだと思います。
ですが、実は塗膜の寿命は樹脂だけでなく「色」によっても大きく左右されます。
無機顔料は色持ちがよく、有機顔料は変色退色が早いことは以前ご説明しました。
確かに、有機顔料を使用すれば鮮やかな色も調色可能ですが、有機HRC塗料は塗り替え直後そのままの色合いを長期的に維持することを優先しています。
そのため、有機HRC塗料は最も色あせしやすい黄と赤をすべて黄土と赤さびに置き換えて色を表現しています。

色持ち・色あせの原因や対策については以下の記事で詳しく解説しています。

耐候性を優先した艶ありのみ
また、有機HRC塗料は「艶あり」のみで、艶調整には対応していません。
艶消し剤などの添加剤を入れることで、耐候性の「要」である樹脂量の割合は減ってしまいます。

塗料の艶と耐候性の関係については以下の記事で詳しく解説しています。

お客様の望むがままに色や艶を対応すれば、選択肢も広がり塗料自体も売りやすくなるでしょう。
ですが、それは塗料の耐候性をないがしろににしていることを意味します。
有機HRC塗料は、長期的なメンテナンスサイクルを考慮し、配合や調色方法に厳密なルールを設けています。
おわりに
3回に分けて、外壁塗装で使われる塗料の種類や特徴、そして塗料の「これから」について、塗料メーカーの視点でお届けしました。
インターネット上にあらゆる情報が溢れ、お客様自らが塗料を選べる時代がきたように思います。
業界側の都合で市場を誘導できたのも過去の話となりました。
塗料の「エンドユーザー」は塗装店から施主様に変わりつつあり、施主様は資産価値のためによりよい塗料とそのエビデンスを求めています。
今回紹介しました有機HRC塗料は、今までの塗料のように「水性だからこうである」「フッ素だからこうである」と、単純かつ簡単に分類して説明することができません。
施主様への説明に苦労されている塗装業者さんもいらっしゃるようです。
ですが、今後の塗料開発における重要な製品であり、これからの塗料は、有機HRCと同様の開発手法で各メーカーがしのぎを削ることは間違いありません。
あまりに長持ちする塗料が出ると、メンテンス周期が伸び、将来的なリフォーム需要そのものが減っていくという声もあります。
同じことを懸念する塗料メーカー側もいるかもしれません。
ですが、新築時のサイディングボードには、すでに15年保証や30年保証を謳うものもでてきています。
塗料だけが現状のままで良いのでしょうか。
今回【最終章】としましたが、弊社の塗料開発はまだまだ途上です。
弊社はこれからもお客様から望まれるであろう塗料を創出していきいます。
弊社の有機HRC塗料ラインナップ
[水性1液]ウルトラ有機HRC
[油性2液]タテイル2



