【遮熱塗料の性能基準】どうやって選ぶ?その判断基準は?

【遮熱塗料の性能基準】どうやって選ぶ?その判断基準は?
塗料について
【遮熱塗料の性能基準】どうやって選ぶ?その判断基準は?

以前、遮熱塗料について、その原理や問題点、おすすめの施工方法などを、塗料メーカーの視点から解説しました。

遮熱塗料が塗膜の温度上昇を抑えることにより遮熱性能を発揮することは前回説明しました。

ですが、その遮熱性能を示す基準がメーカーや塗料ごとにバラバラでは、施主はどれを選べばよいのか、何を基準にどう判断すればよいのか分からなくなります。

そのような「言った者勝ち」にならないよう、業界では遮熱塗料の遮熱性能基準を策定しています。

今回は、業界が定める遮熱性能基準について紹介します。
これによりどなたでも客観的に遮熱塗料の性能を評価・比較することができるようになります。

「塗装業者から遮熱塗料を勧められた」「次回塗り替え時に遮熱塗料を検討している」
そのような方はぜひ最後まで目を通していただければと思います。

遮熱塗料の業界評価基準の種類

遮熱塗料のほとんどは「高日射反射率塗料」であり、その名称の通り、太陽光の赤外線領域(物質を加熱する作用がある波長)の日射反射率を高め、塗膜の温度上昇を抑える塗料のことを指します。

2021年現在、JIS規格で定める遮熱性能の試験方法や評価基準は次の3つがあります。

①JIS K 5602(塗膜の日射反射率の求め方)
②JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)
③JIS K 5603(塗膜の熱性ー熱流計測法による日射吸収率の求め方)

それぞれの評価方法・評価基準について順に紹介していきます。

①JIS K 5602(塗膜の日射反射率の求め方)

2008年に制定された評価方法です。

「近紫外および可視光域」「近赤外域」「全波長域」における日射反射率を測定したものです。
それまで遮熱塗料の性能は各メーカー独自の試験を採用していましたが、この評価基準が制定されたことにより、各メーカーの遮熱塗料を比較することが可能になりました。

②JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)

遮熱塗料は耐候性や日射反射保持率など、屋根用塗料として求められる各種品質要求も満たす必要があることから、2011年に制定されたJIS K 5675では、促進耐候性試験を実施した上で塗料自体の耐候性も等級区分されています

③JIS K 5603(塗膜の熱性ー熱流計測法による日射吸収率の求め方)

上記2つの測定方法は「日射による熱が『内側(室内)に伝わる熱』を比較することができない」「消費者が遮熱性能を簡単に理解することが難しい」などの課題がありました。

また、先にも述べたように遮熱塗料の多くは高日射反射率塗料ですが、中には断熱や放射効果により遮熱機能を発揮する塗料もあり、日射反射率だけではそれら全ての塗料の遮熱性能を横並びに測定・評価することができませんでした。

そこで2017年に、一般消費者にもわかりやすく遮熱塗料を理解し選んでもらうことを目的としたJIS K 5603「塗膜の熱性能-熱流計測法による日射吸収率の求め方」が制定されました。

この測定方法は、疑似太陽光源から塗膜を通過して室内側に貫流する熱量を直接測定する方法を採用し、日射反射、放射、熱伝導などすべての要素を総合的に熱流として測定する方法です。

日本塗料工業会では測定した結果によって、定められた明度(色の明るさ度合い)に応じた遮熱性能レベルを星マークの数でランク付けしています。
これにより多様な遮熱塗料の遮熱性能を画一的に比較評価することができます。

また、塗料メーカーは試験に基づいた星マークを日本塗料工業会に登録することができ、認定を受けた遮熱性能として塗料の製品カタログ等に記載することができます。
消費者は星マークの数を見るだけで遮熱性能を把握することが可能になります。

JIS K 5603の星マークの区分

横軸が明度(L値)です。数値が大きいほど明るい色(=白に近づく)になります。

日本の戸建て住宅の屋根の95%がL値40%以下の暗い色と言われています。
一方、L値80以上の明るい色は、マンション屋上や工場の屋根などで多く使用されています。

縦軸は日射侵入比といって、太陽光「1」に対してその何割が熱となって室内に侵入するかを表しています。
星の数が多いほど遮熱性能が高い塗料と評価できます。

0.6〜0.8(=太陽光の熱の侵入が60〜80%):☆1つ
0.4〜0.6(=太陽光の熱の侵入が40〜60%):☆2つ
0〜0.4(=太陽光の熱の侵入が40%以下):☆3つ

屋根の色は「白」が最強?

先程の表を見ても分かる通り、濃い色になるほど日射侵入比が高くなります。
それは遮熱塗料でも一般塗料でも同じです。

遮熱塗料で塗り替えを検討し情報収集されている方の中には、インターネットなどで「白が最も遮熱効果が高い」という記事やコラムを見た方もいるのではないでしょうか。

遮熱塗料の存在価値とは

事実、白色は太陽光を最も反射する(=太陽の熱を吸収しない)ため遮熱効果が最も高い色です。
遮熱効果だけを考えるなら白は一番適した色かもしれません。

ですが先にも述べたように、日本の戸建ての屋根のほとんどは暗い(濃い)色です。

白い屋根は非常に目立つことになり景観上の問題が生じます。また、汚れが目立ちやすという欠点があります。

遮熱塗料が「いかにカーボンブラックを使わないで濃彩色を表現するか」という技術であることは、以前の記事でも説明しました。

そこには、日本の屋根で多く使われる明度の低い(濃い)領域で遮熱性能を発揮してこそ、遮熱塗料の存在価値があるからです。

遮熱効果を高める「別の」選択肢

ここまで述べたように、明度の高い淡彩色は日射侵入比も小さいため、一般塗料であっても一定の遮熱効果(日射反射機能)があります。

既存の濃彩色から白色に近い遮熱塗料で塗り替えて、サーモグラフィー等でビフォーアフターの表面温度を計測して極端な遮熱効果をアピールしたデータなどを見たことはないでしょうか?

実はあれも遮熱塗料の性能以上に、色の明度が大きく影響しているだけに過ぎません。

遮熱塗料は日射反射機能にすぐれた塗料であることは間違いありませんが、カーボンブラックを使用しないがゆえに耐候性に不安が生じることは以前の記事で述べたとおりです。

もし、耐候性と共に一定の遮熱効果を塗料に望むのなら、カーボンブラックを使用しつつ、景観を損なわない程度に明度の高い色を選択することも選択肢のひとつです。

おわりに

塗料業界が定める遮熱性能の評価方法・評価基準について紹介しました。

大切なお住いに快適に長く住み続けるためには、外壁塗装の成功が重要になります。

「暑さ対策」や「省エネ」と言った耳障りの良いセールストークだけで判断せずに、ご自身で遮熱塗料を理解し、本当にお住まいに合った塗料選びをしていただければと思います。