ローラーが外壁塗装の品質を左右する重大な理由

ローラーが外壁塗装の品質を左右する重大な理由
外壁塗装
ローラーが外壁塗装の品質を左右する重大な理由

外壁塗装や屋根塗装に使用する塗料については、しっかり調べてご自身で選ぶという方もいらっしゃると思いますが、塗装に使用する施工用具についてまで気にされる方は少ないのではないでしょうか。

塗装は刷毛やローラーといった用具を使って行いますが、施工仕様書(塗装仕様書)通りの施工を現場で実施するためには、塗料の性能や施工環境、施工方法と合わせて、それら用具の選定が非常に重要なポイントになります。

施工仕様書(塗装仕様書)については、以下の記事でも紹介しています。

今回は外壁塗装・屋根塗装で使われるローラーの重要性ついて、塗料メーカーの視点から詳しく解説いたします。

ローラーは選択を誤ると、塗料(塗膜)の品質や性能に大きく影響をもたらします。
DIYをされる方にも用具選びの参考になるかと思いますので、ぜひ最後まで目を通していただければと思います。

大切なのは正しい塗布量・適切な塗膜が確保されているか

外壁塗装において、塗り付けられる塗料の量(塗布量)はとても重要です。

塗料の耐用年数を算出する促進耐候性試験を実施する際は、メーカーの標準施工仕様や塗布量に基づいた塗膜の厚み(膜厚)になるように塗装した試験片を作成して行っています。

つまり、塗料のカタログに掲載されている耐用年数や各種機能・性能は、適切な塗布量=膜厚が確保されていることが前提になっています。

標準施工仕様が上塗り2回と記載されていたとしても、ローラーの種類によっては、2回塗っても塗布量に満たない場合もあります。
これでは塗料本来の性能が発揮できないだけでなく、後々になってもそのことに気づくことは難しく、メーカーとしても不本意です。

促進耐候性試験については以下の記事で詳しく解説しています。

仕様書が定める塗料の量を使用しなければ十分な膜厚は確保できない

公共工事では、どんなローラーを使おうとも建築工事の共通仕様書で、上塗りは1平方メートルあたり0.25㎏(2回塗り)以上と定められています。

そして十分な膜厚が確保できている証拠として積算数量通りの「出荷証明書」をメーカーが発行し、元請業者を通じて役所へ提出されます。
もしも出荷量が積算数量よりも少なく、明確な理由もない場合は再施工も検討されます。

実際には、塗装に必要な塗布量はメーカーや製品によって異なります。

ご自宅の塗り替えに十分な膜厚が確保できたかどうかは、使用する塗料の仕様書が定める所要量と実際に使用した塗料の量(使用缶数)で把握できます。

外壁塗装・屋根塗装の施工用具の移り変わり

ローラーの重要性を説明する前に、施工用具の変遷について簡単に紹介します。

昔のペンキ屋さんは平刷毛を使用して、すべて「刷毛塗り」で塗装をしていました。
こすりながら塗装するため下地へのアンカー(定着)効果が高く、今でも橋梁などの公共工事では刷毛塗り指定が残っています。

とはいえ住宅1棟を刷毛だけ塗るのはとても大変であり技術も必要なため、現在では壁の際(キワ)や細かな箇所(狭部)などに使われる程度です。

そこから作業性の良い「吹付塗装」に主流が移り変わります。
しかし住宅塗装での吹付塗装は、飛散の問題、塗料のロスが多い、機械音がうるさいなどの理由から、現在では敬遠されています。
大型物件などでは今も多く採用されています。

そして現在、ほとんどの住宅塗装で使われているのが「ローラー(ローラーブラシ)」です。
ローラーは素材、サイズ、毛丈(ローラーについている毛の長さ)など、非常に多くの種類があります。

ローラーの中でも住宅の塗り替えに広く使用される、ウールローラーと呼ばれるローラーについて、その選択の重要性をご説明します。

ローラーの選択が塗膜の性能を大きく左右する

かつての塗料といえばOP(オイルペイント)や臭気の強い強溶剤しかありませんでしたが、現在では水性塗料、多機能型、反応硬化型、2液反応硬化型など多品種化しており、それにともなって塗料や目的に合ったウールローラーが販売されています。

例えば、水性塗料に適した作業性のよいタイプ、溶剤塗料を塗っても傷みや毛抜けが少ないタイプ、仕上り重視の薄付けローラーもあれば、たっぷり塗れる外装用のローラーなどがあります。

それぞれ適切な選択と使い分けが必要となり、それを誤ると塗膜性能の低下、不具合などに直結する大きな要因となります。

塗膜性能に最も影響を与えるローラーの毛丈

塗料の塗膜の性能に最も影響を与えるのはローラーの毛丈です。

ローラーには短毛、中毛、長毛など毛丈の長さにも種類があります。

短毛のローラーは塗料を薄く塗ることができ、塗装面がフラットできれいに仕上げることができるので、室内や鉄部などに多く使用されています。

ですが、外壁の塗装に短毛のローラーを使用したらどうなるでしょうか。
仕上がりの見た目こそきれいですが、これは薄く伸ばして塗ったからであり、これでは仕様書で規定した十分な塗布量は確保できていません。

作業性が良くても塗料の種類や塗装する場所により向き不向きがある

現場の職人さんに人気のあった「マイクロファイバーローラー」も同様です。

作業性や仕上り、塗料の伸びも良いため職人さんの評判は高いのですが、毛が細く弱いために、毛抜けやチギレが起きやすく、局所的な塗膜剥離の要因になる可能性があります。

また、たっぷり塗ろうとしてもローラーが塗料を吸い込んでいくため、塗布量の確保が難しい傾向にあります。
溶剤に対する耐性もあまりないため、水性塗料や内装工事向けのローラーといえます。

ローラーによる塗布量の違いを検証!

では実際に、使用するローラーによって塗布量(膜厚)にどの程度の差が生じるのか、弊社で検証してみました。

左が推奨されるローラーを使用して塗った塗膜、右が先ほど紹介しましたマイクロファイバーローラーを使用して塗った塗膜になります。

それぞれの塗膜を拡大してみました。左の塗膜はしっかりと膜厚が確保されているのが表面上からもおわかりいただけるかと思います。

一方、マイクロファイバーローラーの塗膜はきめ細やかで均一な印象で、一見こちらの方がきれいな仕上がりに見えるかもしれません。ところが……!

それぞれの塗膜の重さを測ってみました。

正しく膜厚が確保された左の推奨ローラーの塗装に対し、マイクロファイバーローラーで塗装した塗膜は44グラムも軽い結果となりました。
これは塗膜乾燥後の重さですので、使われている塗料の量の差はそれ以上であると考えられます。

今回は0.5平方メートル相当の台紙を基材に見立てて塗装しましたので、これを1平方メートルで換算するとおよそ90グラムの差になります。

ですので、仮に外壁の面積が150平方メートルある住宅をマイクロファイバーローラーで塗装した場合、13.5kgも塗布量が足りていないことになります。
これは塗料1缶分に相当する量です……!

施工仕様書通りの塗装を行うためにはローラーの使い分けが必要

このように、数あるローラーの中には、屋根や外壁塗装に必要な塗布量を確保することが難しい種類も多くあります。

先の実験は決してマイクロファイバーローラーが良い悪いということではもちろんなく、水性か溶剤か、1液か2液反応硬化か、外装か内装か、など、塗料の種類や塗る部位によって適切なローラーを使い分ける必要があることを意味しています。

適正でない塗布量は塗膜にさまざまな悪影響を与える

ただ塗るだけであれば、どんなローラーでもある程度塗れてしまいます。

ですが、メーカー側の立場から言えば、必要な塗布量を十分に確保することは正しい塗装の第一前提であり、ローラーの選定はそこに大きく影響します。

塗布量(膜厚)は、耐久性はもちろん、適切な乾燥硬化時間、光沢、仕上がりなどに密接に関係し、影響を与えています。

塗膜が薄ければ当然劣化は早くなりますし、艶が出にくくきれいに仕上がりません。
逆に厚く塗りすぎてもムラやワキ(塗膜表面にできる小さい穴や泡のこと)、乾燥の遅れなどの不具合要因になります。

そのような不具合を避けるためにも、メーカーは製品ごとに所要量や間隔時間、環境条件などを仕様書に明確に定めているのです。

おわりに

外壁塗装・屋根塗装で使用されるローラーの重要性について塗料メーカーの視点で解説しました。

どの塗料メーカーも、現場でどんなローラーが使われ、どのように施工されているのかまでは関知していません。

塗装業者も、たとえ施工管理はしっかり行っていても、使用するローラーは職人まかせというケースは少なくありません。

ですが、これまで説明したように、塗料が本来期待される仕上りや十分な塗膜性能を発揮するためには、適切なローラーを使用することは大変重要なポイントです。

そのため弊社では塗装業者に対し、ローラーの種類の違いが塗膜の性能に与える影響について情報提供し、発信しています。
弊社が自社製品に対し長期保証を発行するためには、質のよい塗料が正しく質の良い塗膜となっていることが前提になるからです。

お住まいの塗り替えを行う際に塗料の選定が済んだら、どんなローラーで施工するのか塗装業者に聞いてみるのも良いかと思います。
塗装業者の管理体制や姿勢などがうかがい知れるかもしれません。

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